唯一の懸念点は〇〇…。圧倒的優良企業!”全国保証”

更新日:2023年4月3日

高配当投資のポートフォリオを大型株で固めるのも良いけど、中小型株も探していきたいと思い始めたパンダが出会ったのが「全国保証」です。この会社、調べれば調べるほど魅力的…。今回は全国保証について8つの指標を用いて、投資する価値のある企業なのかを調査していきます。

全国保証は住宅ローン保証の事業を展開しており、投資セクターは「その他金融」に分類されます。セクター分散を意識して投資に取り組んでいる方はぜひ覚えておいてくださいね!
※本記事のデータは、IR BANKを参照しております。

着目する「8つの要素」とは?

  1. 配当利回り
    株式の購入金額に対して年間で受け取ることのできる配当金を表す数値
  2. 増配回数・減配回数
    増配とは前年と比較して配当金が増えることであり、減配とは前年と比較して配当金が減ること
  3. 売上高
    企業が商品やサービスを提供して得られる売上合計金額
  4. EPS
    1株あたり純利益
  5. 営業利益率
    本業がどれくらい効率的に利益を出しているのか知るための指標
  6. 自己資本比率
    企業の持つ総資本のうち純資産が占める割合
  7. 営業活動CF
    本業による収入と支出の差額
  8. 現金等
    現金や換金性の高い資産をどれだけ持っているのかを表す指標

全国保証の評価

まずは全国保証の評価!
全国保証は、総合26点で「購入」と評価しました。
全国保証は「10年連続増配」「恐慌時にも増配」「売上の安定性」「営業利益率の高さ」に文句のつけようがありません。「自己資本比率」「営業CF」も投資するには十分な水準です。

懸念点は、「現時点での配当利回りの低さ」と「現金等が安定的な増加をしていないこと」です。現金等に関しては10年間で13.66倍に増加しており、長期的には増加していることがわかります。2015年3月期の大幅減少理由を調べて納得することができれば、現金等保有額についての不安は解消できそうです。

最後に残った問題は2.90%の利回りを許容できるかということでしょう。今後の増配に期待して今購入するのか、株価が下がることを期待して購入を先延ばしにするのか、難しい判断が迫られるところです。

配当利回り

配当利回りとは、株式の購入金額に対して年間で受け取ることのできる配当金を表す数値であり、「配当利回り=年間配当金/株式購入金額*100」という式で表されます。

2023年3月24日時点、全国保証の予想配当利回りは、約2.90%です。
※2023年予想配当金額148円、2023年3月24日終値5,110円で計算しました。

高配当株の基準とされる税引前配当利回り3.75%(税引後配当利回り3.00%)には届かない水準です。配当利回り2.90%は100万円を投資していれば、税引前で約29,000円の配当金を得られる計算になります。

配当利回り2.90%はパンダの判断基準3.75%を満たしておらず、×と評価します。株価が4,228円を下回れば、△と評価する基準、配当利回り3.5%を超えます。高配当株の基準値とされる3.75%を超えるためには株価が3,946円を下回る必要があります。52週安値が4,155円であり、3.5%の水準で購入できる可能性はあるかもしれません。

増配回数・減配回数

増配とは前年と比較して配当金が増えることであり、減配とは前年と比較して配当金が減ることを指します。
具体的な全国保証の2012年から2022年の配当金推移はグラフのようになっています。

過去10年間の配当金推移のグラフ

増配・減配の評価

POINT!

総合評価:◎

(10年間での減配実績なし:◎ / 恐慌時の安定配当実績:◎)

2012年~2022年の10年間で増配回数10回、減配0回で2023年は2022年から増配して1株あたり148円の配当を予想しています。2012年と2023年の配当金を比較すると33.25倍に成長しています。

投資の判断基準の1つである「10年間減配なし」に関しては、10年連続で増配しており文句なしの◎評価です。10年前と比較して33.25倍になっていることには驚きです。コロナショックのあった2021年3月決算では1株あたり22円の増配を実施しています

もう1つの指標である「恐慌時の安定配当実績」に関しても◎と評価します。リーマンショック時の2009年(2010年3月決算)では、前年0.4円→4円で増への増配を実施しました。翌年も4円の配当を実施しており、恐慌時も増配を実施または配当金を維持していることがわかります

売上高

売上高とは、企業が商品やサービスを提供して得られる売上合計金額です。営業収益や収益などの呼ばれ方をしている場合もあるが、それらは全て売上高のことを指します。

全国保証の2012年から2022年の売上高推移はグラフのようになっています。

過去10年間の売上高推移のグラフ

売上高の評価

POINT!

総合評価:◎

(売上高の安定性:◎ / 売上高の成長性:○)

売上高は増加10回、減少0回で2012年と2022年の売上高を比較すると約2.30倍に成長しています。

投資判断基準である「売上の安定性」に関しては◎と評価します。10年連続で売上が増加しており文句のつけようがありません。最後に減収を記録したのは2012年3月決算で、減少率は約3%と小幅な減少に収まっています。

もう1つの投資判断基準「売上の成長性」に関しては○と評価します。10年間で売上は2.3倍となっており、○と判断するための基準である1.6倍を超えています。◎と判断する基準である2.6倍には少し届いていませんが、十分な成長を見せていると言えそうです。

EPS

EPSとは、1株あたり純利益のことを指しており、「当期純利益/発行済株式数」という式で表されます。EPSが右肩上がりであれば、それだけでも会社経営としては100点だと言われることもある重要指標です。※当期純利益とは、企業が1年間をとしてあげた収益から人件費や販管費、税金など全ての費用を差し引いた利益のことです。

全国保証の2012年から2022年のEPS推移はグラフのようになっています。

過去10年間のEPS推移のグラフ

EPSの評価

POINT!

EPSの成長性:○

EPSは10回、減少0回で2012年と2022年で比較すると約11.63倍に成長しています。

投資判断の基準である「EPSの成長性」に関しては◎と評価します。10年連続でEPSが増加しており文句のつけようがありません。2020年3月決算を除いた9年間は前年比2桁以上の増加を見せており、会社経営のうまさがわかります

10年連続増配、売上の安定性と成長性に続き、EPSも文句のつけようがないので証券口座を開いて購入しそうになる気持ちもわかります。気持ちはわかりますが、一旦落ち着いてもう少し他の指標も調べていきましょう。

営業利益率

営業利益率は、本業がどれくらい効率的に利益を出しているのか知るための指標であり、「営業利益/売上」という式で示すことができます。※営業利益は、売上から売上原価や販管費などを差し引いた金額です。

全国保証の2012年から2022年の営業利益率推移はグラフのようになっています。

過去10年間の営業利益率推移のグラフ

営業利益率の評価

POINT!

総合評価:◎

(営業利益率5%以上:◎ / 営業利益率のトレンド:○)

営業利益率は10年間で増加8回、減少2回です。

投資判断基準の「営業利益率5%以上」は◎と評価します。2021年度(2022年3月決算)では、◎の基準である営業利益率10%を大幅に超える81.81%の営業利益率を記録しています。2015年3月期決算で営業利益率70%を超えて以降、常に70%以上の水準をキープしており、2022年3月期決算ではついに80%を超えました。

もう1つの投資判断基準である「営業利益率のトレンド」に関しては○と判断します。2011年度(2012年3月決算)には22.5%だった営業利益率は2021年度(2022年3月決算)で80.81%まで上がっています。過去10年間で営業利益率が悪化したのは2016年度と2019年度の2回です。過去10年間で利益率が改善されており、悪化したのが2回以内のため○と評価しました。

自己資本比率

自己資本比率とは、企業の持つ総資本のうち純資産が占める割合のことを指します。一般的には自己資本比率が高ければ高いほど会社が潰れにくいと考えられています。
例えば総資本100万円の企業の自己資本が100万円であれば、自己資本比率は100%です。総資本100万円の企業の自己資本が50万円、借入金額が50万円の場合は自己資本比率50%です。

全国保証の2012年から2022年の自己資本比率はグラフのようになっています。

過去10年間の自己資本比率推移のグラフ

自己資本比率の評価

POINT!

自己資本比率40%以上:○

自己資本比率は10年間で増加9回、減少1回です。

投資判断基準である「自己資本比率40%以上」に関しては○と評価します。2021年度(2022年3月決算)の自己資本比率は44.4%であり、○の評価基準となる40%を満たしています。過去10年間で16.1%→44.4%への改善を見せており、今後◎基準となる60%を超える可能性を感じます。

自己資本比率が40%を超えたのは2020年度(2021年3月期決算)以降であり、10年平均では32.5%ということは押さえておく必要があります。一方で、過去10年間で自己資本比率が減少したのは2019年度(2020年度3月期決算)のみであり、今後急激に自己資本比率が悪化するとは考えにくいと言えそうです。

営業活動CF(営業キャッシュフロー)

営業活動CFとは、本業による収入と支出の差額を指します。投資CFや財務CFを含まないため、本業で利益が出ているのかを確認することができます。

全国保証の2012年から2022年の営業CF推移はグラフのようになっています。

過去10年間の営業CF推移のグラフ

営業CFの評価

POINT!

総合評価:○

(毎年黒字:○ /長期的に増加:○)

10年間で営業CF増加6回、減少3回で2012年と2023年を比較すると約2.27倍に成長しています。

投資判断基準である「毎年黒字」に関しては○と評価します。過去10年間で赤字は一度もなく本業で利益を出し続けています。2014年に200億円を突破して以降、常に200億円以上の黒字を継続しており、300億円を超えた年も4年間あります

もう1つの投資判断基準である「長期的に増加」に関しても○と判断します。過去10年間で営業CFが2.27倍となっており、○の判断基準である1.6倍を超えているため○の評価です。
2019年3月期,2020年3月期,2022年3月期は営業CFが減少していますが、10%以下の減少であり影響はそれほど大きくないと考えて問題なさそうです。

現金等

現金等とは、現金や換金性の高い資産をどれだけ持っているのかを表す指標です。現金等が前年度と比較して増加していれば、経営状態が良いと判断できます。

全国保証の2012年から2022年の現金等推移はグラフのようになっています。

過去10年間の現金等推移のグラフ

現金等の評価

POINT!

安定して増加:△

現金等保有額は増加7回、減少3回で現金等保有額は13.66倍に成長しています。

投資判断基準である「現金等が安定して増加」に関しては△と評価します。10年間で13.66倍になっており、増加量としては非常に魅力的です。しかし2015年に前年比-40%に迫る減少を記録するなど安定して増加したとは言えないと判断しました。40%の減少があることで、○の評価基準である10%超の減少がないことを満たせないため△の評価です。

まとめ

今回の全国保証は、

  1. 配当利回り:×(2.90%)
  2. 増配回数・減配回数:◎
  3. 売上高:◎
  4. EPS:◎
  5. 営業利益率:◎
  6. 自己資本比率:○
  7. 営業活動CF:○
  8. 現金等:△

という結果でした。

全国保証は、総合26点で「購入」と評価しました。
全国保証は「10年連続増配」「恐慌時にも増配」「売上の安定性」「営業利益率の高さ」に文句のつけようがありません。「自己資本比率」「営業CF」も投資するには十分な水準です。

懸念点は、「現時点での配当利回りの低さ」と「現金等が安定的な増加をしていないこと」です。現金等に関しては10年間で13.66倍に増加しており、長期的には増加していることがわかります。2015年3月期の大幅減少理由を調べて納得することができれば、現金等保有額についての不安は解消できそうです。

最後に残った問題は2.90%の利回りを許容できるかということでしょう。今後の増配に期待して今購入するのか、株価が下がることを期待して購入を先延ばしにするのか、難しい判断が迫られるところです。