絶対180円配当!積極的なM&Aを実施する”武田薬品工業”

更新日:2023年5月19日

恐慌があっても、配当性向が100%を超えても絶対に180円配当を死守することで有名な”武田薬品工業”は人気高配当株銘柄の1つです。医薬品セクターでは珍しい高配当株であり、セクター分散を意識した投資には欠かせないと考える方も多いかと思います。

そんな武田薬品工業について、「株主還元姿勢」「業績」「生産性」「安定性」の4つの観点から調査しています。パンダの定めたルールに従って、各指標を点数化しておりますのでぜひ投資の際の参考にしてみてください。

※本記事のデータは、IR BANKを参照しております。
※本記事は作者の頭の整理ならびに情報提供を目的としており、投資を推奨する意図はございません。投資判断はご自身でお願いいたします。

着目する「9つの要素」とは?

  1. 配当利回り
    株式の購入金額に対して年間で受け取ることのできる配当金を表す数値
  2. 配当推移
    増配とは前年と比較して配当金が増えることであり、減配とは前年と比較して配当金が減ること
  3. 配当性向
    増配とは前年と比較して配当金が増えることであり、減配とは前年と比較して配当金が減ること
  4. 売上高
    企業が商品やサービスを提供して得られる売上合計金額
  5. 営業活動CF
    本業による収入と支出の差額
  6. 営業利益率
    本業がどれくらい効率的に利益を出しているのか知るための指標
  7. EPS
    1株あたり純利益
  8. 自己資本比率
    企業の持つ総資本のうち純資産が占める割合
  9. 現金等保有額
    現金や換金性の高い資産をどれだけ持っているのかを表す指標

武田薬品工業の評価

まずは武田薬品工業の評価!
武田薬品工業は、総合17点で「もう少し調査が必要な銘柄」と評価しました。
武田薬品工業は「10年以上連続180円配当」「売上の安定性」「本業で稼ぐ力」「自己資本比率の高さ」などが魅力的です。懸念点としては「EPSの赤字転落実績」「現金等が10%以上減少した年が複数回ある」ということがあげられます。

10年以上連続で180円の配当を実施しており、今後も180円の配当を期待することができそうです。現在は配当利回りが4%を下回っていますが、タイミング次第では5%以上の利回りも期待できそうな銘柄です。

売上の推移や営業CFの推移も順調で稼ぐ力が年々増加していることがわかります。本業で稼ぐ力の増加は株価の上昇や安定した配当の実施に期待感を持たせてくれる要素であり、今後も稼ぐ力に磨きをかけ続けて欲しいところです。また、自己資本比率も40%を超えており、倒産リスクも低いと考えて良さそうです。

懸念点としてEPSの赤字転落と現現金等が10%以上減少した年が複数回あることをお伝えしました。EPSに関しては、経営の上手さを表す指標とされており、赤字転落は非常に好ましくないことです。ただし、赤字転落したのは8年前の2015年3月決算であり、その後は常に黒字で推移しています。ポジティブに捉えるのであれば、経営が上手になってきているということもできるかもしれません。現金等が10%以上減少した年が複数回あることに関しても、納得できる理由での減少であれば、投資判断にネガティブな印象を与えない可能性があるため理由を調べる必要があります。

株主還元

本記事の株主還元では、「配当利回り」「配当推移」「配当性向」の3点から企業が積極的に株主還元をおこなっているのかを調査していきます。現在の配当利回りからは高配当株として投資に値する水準なのかを判断し、配当推移からは、安定した配当を実施してくれているのか、この先も配当を実施し続ける可能性が高いのかを考察します。配当性向については、無理のない株主還元を実施しており、今後も継続的な株主還元が見込めるのかを判断していきます。

配当利回り

配当利回りとは、株式の購入金額に対して年間で受け取ることのできる配当金を表す数値であり、「配当利回り=年間配当金/株式購入金額*100」という式で表されます。

2023年5月2日時点、武田薬品工業の予想配当利回りは約3.93%です。
※2023年予想配当金額180円、2023年5月2日終値4,580円で計算しています。

高配当株の基準とされる税引前配当利回り3.75%(税引後配当利回り3.00%)を上回る水準です。
配当利回り3.93%は100万円を投資していれば、税引前で約39,300円の配当金を得られる計算になります。
配当利回り3.93%はパンダの判断基準3.75%を満たしており、○と評価します。株価が3,600円を下回れば、◎と評価する基準の配当利回り5%を超えます。現在は4,500円を超えている株価ですが、2022年6月頃の株価が3,600円付近のため、配当利回り5%を超える可能性もありそうです。

配当金推移

増配とは前年と比較して配当金が増えることであり、減配とは前年と比較して配当金が減ることを指します。
具体的な武田薬品工業の2012年から2022年の配当金推移はグラフのようになっています。

過去10年間の配当金推移のグラフ

POINT!

総合評価:○

(10年間での減配実績なし:○ / 恐慌時の安定配当実績:○)

2012年~2022年の10年間、毎年180円の配当を実施しており、2023年3月決算でも180円の配当を予想しています。

投資の判断基準の1つである「10年間減配なし」に関しては、10年間で減配はなく、○と評価します。武田薬品工業は2009年3月期以降、常に180円の配当を実施しており安定感は抜群です。

もう1つの指標である「恐慌時の安定配当実績」に関しても○と評価します。前述のとおり2009年3月決算以降、常に180円の配当を実施しており、リーマンショック・コロナショックでも減配することなく安定した配当を実施しています。

配当性向

配当性向とは、当期純利益のうち、どれだけの割合を配当金の支払いに当てたのかを示す指標です。配当性向は高ければ高いほど良いわけではありません。配当性向が100%以上の場合、当期純利益以上に配当金を支払っており、事業の継続性に影響を及ぼす可能性があります。配当性向30~50%程度の企業は優良企業と考えることができます。また、企業によっては中期経営計画で目標とする配当性向を公表している企業もありますので、中期経営計画の水準を満たしているのかを調べることも大切です。

配当性向

POINT!

配当性向:×

投資判断の基準である配当性向30~50%は×と評価します。2022年3月決算の配当性向は100%を超えており、利益以上の株主還元を実施しています。過去10年間で配当性向が100%を超えた年が8年もあり、過剰な還元をしていることがわかります。

一般的に高すぎる配当性向は継続が難しく、減益による配当金の減配が起こりやすいとされています。配当性向100%以上を続けることができる理由については、さらに調べる必要がありそうです。

株主還元の評価

  1. 配当利回り:○ 
  2. 配当推移:○ 
  3. 配当性向:× 

収益性

本記事の収益性では、「売上高」「営業CF」の2点から事業が順調に拡大しており、企業が収益を得ることができているのかを調査していきます。売上が順調に拡大していれば、配当金の増加だけではなく、今後の株価の上昇も期待することができます。営業CFでは、企業が本業でどれだけの利益を出しているのかを知ることができ、しっかりと稼いでいる企業なのかを判断できます。また、営業CFが長期的に増加していれば、今後もさらに本業で利益を出すことが期待でき、継続的な配当を計算することができます。

売上高

売上高とは、企業が商品やサービスを提供して得られる売上合計金額です。営業収益や収益などの呼ばれ方をしている場合もあるが、それらは全て売上高のことを指します。

武田薬品工業の2012年から2022年の売上高推移はグラフのようになっています。

過去10年間の売上高推移のグラフ

POINT!

総合評価:○

(売上高の安定性:○ / 売上高の成長性:○)

売上高は増加8回、減少2回で2012年と2022年の売上高を比較すると約2.36倍に成長しています。

投資判断基準である「売上の安定性」に関しては○と評価します。過去10年で増収が8回あり、10%以上の売上減少は1度もないため○と評価しました。2017年3月決算では,前年比4.4%の減収、2021年3月期決算では、前年比2.7%の減収に収まっており、安定して売上をあげていることがわかります。10年連続での売上増加を◎としているため、○の判断ですが十分な安定性です。

もう1つの投資判断基準「売上の成長性」に関しても○と評価します。10年間で売上は2.36倍となっており、○と判断するための基準である1.6倍を超えています。2023年3月決算では3.93兆円の売上を予想しており、2013年3月決算と比較すると2.6倍に成長します。決算後に成長性の評価が◎に変わる可能性も十分にあるといえます。

営業活動CF(営業キャッシュフロー)

営業活動CFとは、本業による収入と支出の差額を指します。投資CFや財務CFを含まないため、本業で利益が出ているのかを確認することができます。

武田薬品工業の2012年から2022年の営業CF推移はグラフのようになっています。

過去10年間の営業CF推移のグラフ

POINT!

総合評価:◎

(毎年黒字:○ / 長期的に増加:◎)

10年間で営業CF増加6回、減少4回で2012年と2023年を比較すると約3.29倍に成長しています。

投資判断基準である「毎年黒字」に関しては○と評価します。過去10年間で赤字は一度もなく本業で利益を出し続けています。2016年3月期決算では、営業CFが約30億円まで縮小しましたが、赤字に転落することなく本業で利益を出し続けたことは評価できます。

もう1つの投資判断基準である「長期的に増加」に関しては◎と判断します。10年間で2.29倍へと成長をしており、◎の評価基準である2.6倍への成長を大幅に超えていることが理由です。2017年3月期決算では前年比+766%の大幅増加、2020年3月期決算は前年比+103%の大幅増加を記録するなど、本業で稼ぐ力が大幅に増加する年があるのが特徴です。

収益性の評価

  1. 売上高:○ 
  2. 営業活動CF:◎ 

生産性

本記事の生産性では、「営業利益率」「EPS」の2点から企業の生産性の高さを調査していきます。営業利益率では、本業がどの程度効率的に利益を生み出しているのかを判断します。本業で効率的に利益を生み出している企業は、継続的に株主に還元する余裕があると考えることができるため非常に重要な指標となっています。
EPSからは、1株あたりの純利益が継続的に増えているのかを見ていきます。EPSは経営の上手さを表すとも言われており、右肩上がりの銘柄は順調な経営をしていると判断することができます。

営業利益率

営業利益率は、本業がどれくらい効率的に利益を出しているのか知るための指標であり、「営業利益/売上」という式で示すことができます。※営業利益は、売上から売上原価や販管費などを差し引いた金額です。

武田薬品工業の2012年から2022年の営業利益率推移はグラフのようになっています。

過去10年間の営業利益率推移のグラフ

POINT!

総合評価:○

(営業利益率5%以上:◎ / 営業利益率のトレンド:×)

営業利益率は10年間で増加5回、減少5回です。

投資判断基準の「営業利益率5%以上」は◎と評価します。2022年3月決算では、◎の基準である営業利益率10%を超える12.91%の営業利益率を記録しています。2015年3月決算で営業利益率がマイナスに転落したことがあるにも関わらず、10年平均は9.05%と高水準です。営業利益率が高いとはいえ、2015年3月決算で営業利益率がマイナスに転落した過去があることには留意が必要です。

もう1つの投資判断基準である「営業利益率のトレンド」に関しては×と判断します。2012年3月決算に17.56%だった営業利益率は2022年3月決算で12.91%へ悪化しています。10年前と比較して営業利益率が悪化していることから、長い目で見て上昇トレンドとは判断できません。

EPS

EPSとは、1株あたり純利益のことを指しており、「当期純利益/発行済株式数」という式で表されます。EPSが右肩上がりであれば、それだけでも会社経営としては100点だと言われることもある重要指標です。※当期純利益とは、企業が1年間をとしてあげた収益から人件費や販管費、税金など全ての費用を差し引いた利益のことです。

武田薬品工業の2012年から2022年のEPS推移はグラフのようになっています。

過去10年間のEPS推移のグラフ

POINT!

EPSが右肩上がり:×

EPSは5回、減少5回で2012年と2022年で比較すると約0.94倍に縮小しています。

投資判断の基準である「EPSが右肩上がり」に関しては×と評価します。過去10年間で1度でも赤字転落した場合、×評価をするというルールに基づいた評価です。2015年3月決算で前年比-237%、2021年3月決算で前年比+747%と増減が非常に激しいことが特徴です。
EPSは経営の上手さを表す指標といわれており、年度によって増減が激しいことは投資をする上で好ましいことではないと考えられます。

生産性の評価

  1. 営業利益率:○ 
  2. EPS:× 

安全性

本記事の安全性では、「自己資本比率」「現金等保有額」の2点から企業の安全性の高さを調査しています。自己資本比率は、40%以上あれば倒産確率が低いと考えられており、この水準を超えている企業は比較的安全な投資先だと判断することができます。現金等保有額は、現金や換金性の高い資産の保有額であり、企業の経営が順調であれば増加していく傾向だとされています。また、現金等保有額が多いほど、資金が必要になった際に対応しやすいため企業の安全性を示す指標だと考えています。

自己資本比率

自己資本比率とは、企業の持つ総資本のうち純資産が占める割合のことを指します。一般的には自己資本比率が高ければ高いほど会社が潰れにくいと考えられています。
例えば総資本100万円の企業の自己資本が100万円であれば、自己資本比率は100%です。総資本100万円の企業の自己資本が50万円、借入金額が50万円の場合は自己資本比率50%です。

武田薬品工業の2012年から2022年の自己資本比率はグラフのようになっています。

過去10年間の自己資本比率推移のグラフ

POINT!

自己資本比率40%以上:○

自己資本比率は10年間で増加4回、減少6回です。

投資判断基準である「自己資本比率40%以上」に関しては○と評価します。2022年3月決算の自己資本比率は43.1%であり、基準となる40%を超えています。過去10年間で6度の減少を記録していますが、10年平均は47.0%であり倒産リスクは低いといえます。

ただし、2019年,2020年本決算で自己資本比率が40%を下回った原因については、海外M&Aを積極的におこなっていることで自己資本比率が下がっていると想定をしていますが、さらに調査を進めて理解をしておく必要がありそうです。

現金等保有額

現金等とは、現金や換金性の高い資産をどれだけ持っているのかを表す指標です。現金等が前年度と比較して増加していれば、経営状態が良いと判断できます。

武田薬品工業の2012年から2022年の現金等推移はグラフのようになっています。

過去10年間の現金等推移のグラフ

POINT!

安定して増加:×

現金等保有額は増加4回、減少6回で現金等保有額は1.89倍に成長しています。

投資判断基準である「現金等が安定して増加」に関しては×と評価します。10年間で10%を超える減少を3回記録しており、安定して増加しているとはいえません。ただし、現在8500億円の現金等を保有しており、キャッシュがないわけではないことは理解しておきましょう。

10%以上の減少を記録した、2016年,2017年,2022年についてはどのような理由で現金等保有額が減少したのか調べる必要があります。

生産性の評価

  1. 自己資本比率:○ 
  2. 現金等保有額:× 

まとめ

今回の武田薬品工業は、

  1. 株主還元
    1. 配当利回り:○
    2. 配当推移:○
    3. 配当性向:×
  2. 収益性
    1. 売上高:○
    2. 営業CF:◎
  3. 生産性
    1. 営業利益率:○
    2. EPS:×
  4. 安全性
    1. 自己資本比率:○
    2. 現金等保有額:×

という結果でした。

武田薬品工業は、総合17点で「もう少し調査が必要な銘柄」と評価しました。
武田薬品工業は「10年以上連続180円配当」「売上の安定性」「本業で稼ぐ力」「自己資本比率の高さ」などが魅力的です。懸念点としては「EPSの赤字転落実績」「現金等が10%以上減少した年が複数回ある」ということがあげられます。

10年以上連続で180円の配当を実施しており、今後も180円の配当を期待することができそうです。現在は配当利回りが4%を下回っていますが、タイミング次第では5%以上の利回りも期待できそうな銘柄です。

売上の推移や営業CFの推移も順調で稼ぐ力が年々増加していることがわかります。本業で稼ぐ力の増加は株価の上昇や安定した配当の実施に期待感を持たせてくれる要素であり、今後も稼ぐ力に磨きをかけ続けて欲しいところです。また、自己資本比率も40%を超えており、倒産リスクも低いと考えて良さそうです。

懸念点としてEPSの赤字転落と現現金等が10%以上減少した年が複数回あることをお伝えしました。EPSに関しては、経営の上手さを表す指標とされており、赤字転落は非常に好ましくないことです。ただし、赤字転落したのは8年前の2015年3月決算であり、その後は常に黒字で推移しています。ポジティブに捉えるのであれば、経営が上手になってきているということもできるかもしれません。現金等が10%以上減少した年が複数回あることに関しても、納得できる理由での減少であれば、投資判断にネガティブな印象を与えない可能性があるため理由を調べる必要があります。