連続増配継続中!損保業界首位を傘下に抱える”東京海上HD”
本日は、高配当株の中でも人気の高い東京海上HDについて8つの要素を用いて調査していきます。
※本記事のデータは、IR BANKを参照しております。
着目する「8つの要素」とは?
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配当利回り
株式の購入金額に対して年間で受け取ることのできる配当金を表す数値 - 増配回数・減配回数
増配とは前年と比較して配当金が増えることであり、減配とは前年と比較して配当金が減ること - 売上高
企業が商品やサービスを提供して得られる売上合計金額 - EPS
1株あたり純利益 - 営業利益率
本業がどれくらい効率的に利益を出しているのか知るための指標 - 自己資本比率
企業の持つ総資本のうち純資産が占める割合 - 営業活動CF
本業による収入と支出の差額 - 現金等
現金や換金性の高い資産をどれだけ持っているのかを表す指標
東京海上HDの評価
まずは東京海上HDの評価!
東京海上HDの株式については「購入を検討」と評価しました。
EPSの成長性や現金等が右肩下がりであることなど、投資判断にマイナスな要素もありますが、総合的には投資に値すると判断しています。購入検討の最大の要素は配当利回りが3.53%であることです。配当利回り3.75%となる2,666円を下回った段階から購入開始を予定です。
総合的判断の指標となったさまざまな要素についても記録を残していきます。
配当利回り
配当利回りとは、株式の購入金額に対して年間で受け取ることのできる配当金を表す数値であり、「配当利回り=年間配当金/株式購入金額*100」という式で表されます。
2022年12月16日時点、東京海上HDの予想配当利回りは、約3.53%です!
※2023年予想配当金額100円、2022年12月12日終値2,828円で計算しています。
高配当株の基準とされる税引前配当利回り3.75%(税引後配当利回り3.00%)を上回る水準になっています。配当利回り3.53%は100万円を投資していれば、税引前で約35,300円の配当金を得られる計算です。
基本的に税引前配当利回り3.75%(税引後配当利回り3.00%)を目安に投資判断をしており、東京海上HDの配当利回りは基準を満たしていません。株価が2666円を下回れば配当利回りは3.75%を超えます。2022年11月中に2,666円を下回ったこともあり、タイミングによっては高配当株の条件を満たします。
増配回数・減配回数
増配とは前年と比較して配当金が増えることであり、減配とは前年と比較して配当金が減ることを指します。
数値から読み取る増配・減配
10年間で増配回数10回と順調に増配
具体的な東京海上HDの2012年から2022年の配当金推移はグラフのようになっています。
※株式分割の関係があり、現在の1株あたり配当は表の値の1/3。
※グラフの値は特別配当除く
2012年~2022年の10年間で増配回数10回と毎年増配を実施しました。2023年も2022年から増配して1株あたり300円の配当を予想しています。2012年から10年連続増配で配当金は4.9倍へと増加しました。減配は0回と配当金に関しては抜群の安定感です。更に東京海上HDはリーマンショック時にも減配をしておらず、不況時にも配当金を出し続けられると予想します。(参照:配当金チェッカー)
増配・減配の評価
POINT!
総合評価:◎
(10年間での減配実績なし:◎ / 恐慌時の安定配当実績:◎)
投資の判断基準の1つである「10年間減配なし」に関しては◎と評価します。10年連続で増配をしており、投資するには十分すぎる銘柄です。もう1つの指標である「恐慌時の安定配当実績」に関しても◎と評価します。リーマンショック時の2009年は、前年48円→48円で減配なし、コロナショック時には増配を実施しています。リーマンショック時にも減配していないため◎の評価です。
売上高
売上高とは、企業が商品やサービスを提供して得られる売上合計金額です。営業収益や収益などの呼ばれ方をしている場合もあるが、それらは全て売上高のことを指します。
数値から読み取る売上高
10年間で増加10回、減少0回
10年間で約1.71倍へ成長
東京海上HDの2012年から2022年の売上高推移はグラフのようになっています。
売上高は10年間で増加10回と順調に推移しています。2012年と2022年の売上高を比較すると約1.71倍です。2012年.2013年.2014年の3年間は前年比約10%の成長、2018年~2021年は常に3%未満の成長率です。2022年には7%成長と勢いを取り戻した印象を受けました。直近5年に限れば1年ごとの売上増加幅は大きくありませんが着実な成長を続けています。
売上高の評価
POINT!
総合評価:◎
(売上高の安定性:◎ / 売上高の成長性:◎)
投資判断基準である「売上の安定性」に関しては◎と評価します。過去10年は毎年売上が増加しているため、文句なしで◎の評価です。もう1つの投資判断基準「売上の成長性」に関しても◎と評価します。10年間毎年売上増加に加えて、1.71倍となっており成長性に関しても文句なしです。
EPS
EPSとは、1株あたり純利益のことを指しており、「当期純利益/発行済株式数」という式で表されます。EPSが右肩上がりであれば、それだけでも会社経営としては100点だと言われることもある重要指標です。※当期純利益とは、企業が1年間をとしてあげた収益から人件費や販管費、税金など全ての費用を差し引いた利益のことです。
数値から読み取るEPS
10年間で増加8回、減少2回
10年間でEPSは約82.1倍に増加
東京海上HDの2012年から2022年のEPS推移はグラフのようになっています。
EPSは10年間で増加8回、減少2回、2012年と2022年で比較すると約82.1倍に成長しています。※2012年のEPSは前年比-90%以上であり参考値として適切ではない可能性あり。2020年、2021年と2年連続でEPSが減少していることは懸念点です。過去を振り返ると、2010年、2012年も2年連続でEPSが減少しており、1度減少に転じると増加までに2年以上の時間を要する傾向があります。
2012年、2021年のEPS大幅減少要因については別途調査が必要です。2022年にEPSが大幅に改善した理由に関しても調査が必要です。
EPSの評価
POINT!
EPSの成長性:△
投資判断の基準である「EPSの成長性」に関しては△と評価します。過去10年で減少2回ですが、2年連続での減少があることが理由です。2022年には10年で最高のEPSを記録しており、今後は順調な増加を期待します。
営業利益率
営業利益率は、本業がどれくらい効率的に利益を出しているのか知るための指標であり、「営業利益/売上」という式で示すことができます。※営業利益は、売上から売上原価や販管費などを差し引いた金額です。
数値から見る経常利益率
過去10年で増加6回、減少4回
常に5%以上を記録
東京海上HDの2012年から2022年の経常利益率推移はグラフのようになっています。
※通常は営業利益率で判断しているが、東京海上HDの営業利益が公開されていないため、経常利益率で判断します。
経常利益率は10年間で増加6回、減少4回、2012年と2022年を比較すると2.11倍に増加しています。2021年には約35%の大幅下落を記録した一方、2022年には+100%増加に迫る大幅な上昇を記録しています。2022度決算では経常利益率14.59%と高水準ですが増減が激しく不安定な状態です。
営業利益率の評価
POINT!
総合評価:○
(営業利益率5%以上:◎ / 営業利益率の成長性:×)
投資判断基準の「営業利益率5%以上」は◎と評価します。2012年以降は常に5%以上をキープ、2013年以降は2021年を除き、7.5%を上回る超高水準で推移しています。2022年は14.59%の営業利益率を記録しており、十分な水準です。もう1つの投資判断基準である「営業利益率の成長性」に関しては×と判断します。過去10年で営業利益率減少が4回あることが理由です。
自己資本比率
自己資本比率とは、企業の持つ総資本のうち純資産が占める割合のことを指します。一般的には自己資本比率が高ければ高いほど会社が潰れにくいと考えられています。
例えば総資本100万円の企業の自己資本が100万円であれば、自己資本比率は100%です。総資本100万円の企業の自己資本が50万円、借入金額が50万円の場合は自己資本比率50%です。
数値から読み取る自己資本比率
10年間で増加6回、減少4回
ソルベンシーマージン比率は200%を超える
東京海上HDの2012年から2022年の自己資本比率はグラフのようになっています。
過去10年間で増加6回・減少4回を記録し、自己資本比率は約1.3倍へと成長しました。東京海上HDの自己資本比率は2012年の11.3%を下限に、11.3%~17.1%の間で推移しています。2012年~2015年は毎年右肩上がりで自己資本比率が増加するも、その後は増減を繰り返し、2022年の自己資本比率は14.8%です。
2016年以降の5年間、自己資本比率が減少を続けた理由についてさらに調べる必要がありそうです。海外展開や新領域開拓などへの投資を実施していた可能性もあります。
自己資本比率の評価
POINT!
ソルベンシーマージン比率:◎
損害保険会社はビジネスモデルの関係上、自己資本比率が低くなります。そのため通常の投資判断基準である「自己資本比率40%以上」に変わり、「ソルベンシーマージン比率200%以上」を用いて評価します。「ソルベンシーマージン比率200%以上」に関しては◎と評価します。
「ソルベンシーマージン比率」とは、保険会社が保険金支払いのために積み立てている資金を上回って有する「支払い余力」を測る指標のことです!
東京海上HDの傘下には多くの保険会社があり、一概に判断はできない状況ですが、ここでは傘下企業のソルベンシー・マージン比率を複数調査し、安定性を判断することにします。
- 東京海上日動火災保険株式会社:800%超
- 東京海上日動あんしん生命:1000%超
- イーデザイン損害保険:600%超
3社全てで「ソルベンシー・マージン比率が200%」を大幅に超えているため◎と評価します。
営業活動CF(営業キャッシュフロー)
営業活動CFとは、本業による収入と支出の差額を指します。投資CFや財務CFを含まないため、本業で利益が出ているのかを確認することができます。
数から読み取る営業CF
10年間で赤字なし
10年間で約15.71倍へと増加
東京海上HDの2012年から2022年の営業CF推移はグラフのようになっています。
営業CFは10年連続黒字です。増加が8回、減少2回で15.71倍へ成長しています。減少幅は2018年が約2.7%、2022年が約6.4%と大幅な減少ではありません。2012年以前を振り返ると、2008年~2012年にかけて営業CFは右肩下がりで減少し、2012年に底を打ち回復した過去がありました。
営業CFの評価
POINT!
総合評価:◎
(毎年黒字:◎ / 長期的に増加:○)
投資判断基準である「毎年黒字」に関しては◎と評価します。過去10年間で赤字は一度もなく本業で利益を出し続けています。もう1つの投資判断基準である「長期的に増加」に関しては○と判断します。過去10年間で減少は2回ですが、5%を超える減少は2022年の1回であり長期的には営業CFが増加していることが理由です。
直近10年は順調な推移だが、2008年~2012年の4年間で営業CFが90%以上減少した過去があることは念頭におく必要ありそうだね…
現金等
現金等とは、現金や換金性の高い資産をどれだけ持っているのかを表す指標です。現金等が前年度と比較して増加していれば、経営状態が良いと判断できます。
数値から読み取る現金等
10年間で増加1回、減少9回
10年間で約0.83倍
東京海上HDの2012年から2022年の現金等推移はグラフのようになっています。
10年間で増加1回、減少9回で2012年と2022年を比較すると83%まで減少しました。2015年に前年比約50%の増加を記録した後は毎年現金等が減少していますが、減少9回も9000億円を下回ったことはありません。
現金等の評価
POINT!
安定して増加:×
投資判断基準である「現金等が安定して増加」に関しては×と評価します。10年前と比較して現金等保有額は減少しており、安定して増加しているとは言えません。
まとめ
今回の東京海上HDは、
- ①配当利回り:約3.53%
- ②増配回数・減配回数:◎
- ③売上高:◎
- ④EPS:△
- ⑤営業利益率:○
- ⑥自己資本比率(ソルベンシーマージン比率):◎
- ⑦営業活動CF:◎
- ⑧現金等:×
という結果でした。
東京海上HDは合計点数24点で「購入を検討」と判断しました。
EPSの成長性や現金等が右肩下がりであることなど、投資判断にマイナスな要素もありますが、総合的には投資に値すると判断しました。購入検討の最大の要素は配当利回りが3.53%であるです。配当利回り3.75%となる2,666円を下回った段階から購入開始を予定しています。
営業利益率の成長性に関しては×評価ですが、すでに営業利益率が高い水準にあるため総合評価は○と判断しています!